この記事では英検1級に合格するまでに私が取り組んだ学習を時系列で紹介します。
私は留学経験がなく帰国子女でもないため、他の合格者の方と比べると英語力そのものはどうしても劣ると思います。
それでも余裕を持って一発合格することができたのは、試験の分析とそれに基づいた戦略的な準備がうまくできたからだと思っています。
学習開始時のレベルや過去問演習の結果なども詳しく書いていきますので、英検1級の学習計画を立てるうえでの一つのサンプルとしてお役立ていただけると嬉しいです。


はじめに知っていただきたいこと
英検1級 = ネイティブレベル、ではない!
英検1級は英検の中では最上位のグレードであるため、一部では「英検1級はネイティブでも難しい」といった誤解をされがちです。
実際に私も初学者の頃はそう思っていましたし、家族や友人から「英検1級ってネイティブレベルってこと?」と聞かれることもあります。
しかし、英検1級で判定する英語力はCEFRでいうB2~C1レベルであり、最上位のC2レベル(ネイティブに近いレベルの熟達した言語学習者)を判定する試験ではありません。

CEFRとは?
(出典)BRITHISH COUNCIL
「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR: Common European Framework of Reference for Languages)」は、言語の枠や国境を越えて、外国語の運用能力を同一の基準で測ることが出来る国際標準です。
もちろん、それでも日本人の英語学習者にとっては高いハードルではありますが、「英検1級はネイティブレベルの英語力を要求される」という誤解はすべきではないと思います。
特に、英検1級の参考書で英作文やスピーチのモデルアンサーを見ていると、まさにネイティブレベルの表現が並びますが、実際の試験ではこのレベルの回答ができなくても十分に合格します。
英検1級を先入観だけで過度にリスペクトし恐れる必要はありません。戦う相手の姿を正しく理解して戦略的に対策を進めることが合格の鍵だと思います。

私も決して流暢に話せるわけではないですし、ネイティブレベルに近づくにはまだまだ努力が必要だと思っています。
ライティグ・スピーキングの難解なテーマには怯んでしまいますが、簡単な英語でアウトプットができれば決して採点は厳しくないです!
一次試験6か月前:語彙対策スタート
語彙対策はなるべく早く始めよう
私が英検1級の受験を意識し始めたのは一次試験の約6ヶ月前。
TOEICでは930点を取得していましたが、英検1級レベルの単語は知らない単語の方が多い状態でした。
語彙力強化には根気が必要ですが、時間をかけて取り組むことで、確実な得点源になるので、英検1級の受験を決めたタイミングでなるべく早く英検1級用の単語帳を購入することをおすすめします。
定番のでる順パス単をしっかり覚えることで、リーディング大問1の語彙問題で安定して20/25は取れるようになります。
語彙問題に自信が持てるようになると、当然その後の読解問題の正答率も上がりますし、スコアも大崩れしなくなるのでメンタル的にも効果が大きいです。
ちなみに、英検1級の語彙はネイティブでも使わないようなものばかりといった誤解もありますが、ニュース記事や洋書を読んでいると高頻度で出くわす実践的な語彙ばかりです。
私自身、一般的なニュース記事であれば辞書なしで読めるようになったのは、英検1級の語彙対策に真剣に取り組んだからだと思っています。
それぐらいニュース記事には英検1級単語が普通に使われるので、英検1級でのボキャビルは必ずさらに上のステップに進むにあたって役立ちます。
- なるべく早く語彙問題対策をスタートして英検1級の語彙に慣れる



単語はとにかく高回転が基本です。私の場合は1週間で1周するペースで試験直前まで回し続けました。
一次試験4か月前:過去問演習スタート
過去問を解いて課題を見つけよう
私が初めて英検1級の過去問を解いたのは一次試験の約4ヶ月前。(英検を受けたのは中学生の時の3級が最後だったので、英検の問題形式自体がほぼ初めてという状態でした)
語彙対策をせずに過去問に挑むとかなり凹むと思うので、ある程度パス単を回した後にチャレンジするのが良いと思います。
英検ではとても親切なことに、直近3回分の過去問が英検のHP(https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_1/solutions.html)で無料で手に入ります。(TOEIC育ちの私は結構びっくりしました)
まずはHPにアップされている問題を解いたあとで、市販の過去6回分の過去問集に取り組むことで、最低でも計9回分の過去問演習ができるので準備としては十分な量でしょう。
基本的には定期的に過去問を解いて問題に慣れつつ、弱点を補強していくような勉強法がおすすめです。
私の過去問演習のスケジュールとスコアの変遷を書いたので参考にしてみてください。
Reading | Listening | Writing | |
---|---|---|---|
2022.9.9 | 31 (75.6%) | 18 (66.6%) | – |
2022.10.23 | 31 (75.6%) | 22 (81.4%) | – |
2022.10.30 | 32 (78.0%) | 21 (77.7%) | – |
2022.11.6 | 37 (90.2%) | 21 (77.7%) | – |
2022.12.4 | 34 (82.9%) | 23 (85.1%) | – |
2022.12.11 | 33 (80.4%) | 21 (77.7%) | – |
2023.1.7 | 34 (82.9%) | 22 (81.4%) | – |
2023.1.9 | 36 (87.8%) | 22 (81.4%) | – |
2023.1.15 | 39 (95.1%) | 19 (70.3%) | – |
2023.1.21 | 35 (85.3%) | 24 (88.8%) | – |
2023.1.22 (本番) | 39 (95.1%) | 22 (81.4%) | 31 (96.7%) |
英検1級の過去問に初めてチャレンジする時は少し勇気が要りますが、この段階で自分の課題を認識して、目標との距離感を把握することは非常に大切なので頑張りましょう。
- 過去問にチャレンジして取り組むべき課題を明確にする



自分の場合は、リーディングの時間配分がかなり厳しいこと、英作文が書ける気がしないことがこの時点での最大の課題でした。一方で、リスニングについてはTOEICの経験が生きて特別な対策は必要ないと感じました。
一次試験3か月前:英作文対策スタート
まずはモデルエッセイを写して型を身につけよう
私が英作文対策を開始したのは一次試験の約3ヶ月前。
これまでライティングの試験は受けたことがなかったので、英文エッセイの書き方は右も左も分からない状態でした。
英検1級の作文では賛否ある社会的なテーマに対して、理由を3つ挙げながら自分の立場を論理的に述べる必要があります。
過去問を見ても書ける気がしなくて途方に暮れている方もいるのではないでしょうか。(私がそうでした)
そこで、おすすめの書籍が植田一三先生の『英検1級ライティング大特訓』。
汎用性の高いテンプレートと論理的で明快なエッセイを書くための考え方が学べます。
まず初めの1ヶ月ほどはあまり深く考えずに本書のモデルエッセイを写経しましょう。
一周する頃には英検1級英作文の論理展開の型や役に立つ表現が掴めてきます。
ここで注意いただきたいのは、本番では本書の模範解答ほどのクオリティで書けなくても十分に合格点がもらえる、ということです。
30分で本書レベルの英文が書けたら、英検1級ライティング満点を通り越して余裕でCEFR C2レベルなので、模範回答の構成や語彙レベルの高さにあまり落ち込まないようにしましょうね。
- 英検1級英作文の形式に慣れる
- 参考書の表現をすべて吸収する必要はない、自分なりの論理展開の”型”を身につけることが大切



上記参考書のモデルエッセイを初めて見た時「こんなの自分が書けるわけない、、」と思ってすごく凹んだのを覚えています。今になって思うと、参考書レベルで書けなくても十分に合格点はもらえるのであまり気にしなくて大丈夫です!
参考書の文章に近づけるよりも自分の言葉で書くことを意識しました。
一次試験1か月前:毎日英作文&毎週過去問
英作文は時間を測って実践的なトレーニングをしよう
一次試験の約1ヶ月前になると英作文は時間を測って実践的なトレーニングを開始しました。
毎日1本は英作文を書くことを目標にしていたので、本番までに40本以上は書きました。
時間は30分ほどで書ければ理想的ですが、私の場合はいつも32~33分ほどかかっていました。(本番では緊張もあって37分ほどかかりました)
英検1級の英作文に対応するために必要な練習は以下の2つ。
- どんなトピックに対しても3つの理由を整理するアイデア出しの練習
- エッセイで役に立つ汎用性の高い英語表現を身につける練習
また、英検1級の英作文対策は指導者の方に添削してもらうのがマストという風潮がありますが、様々なAIツールが存在する今日においては必ずしもそれは必要条件ではないと思います。
実際に私はGrammarlyとDeepLを活用した完全独学で本番に臨みましたが、31/32という満点近い評価をいただけたので、こうしたツールを上手く使っての独学は十分に通用します。




週末に本番を意識した過去問演習を
毎日の単語学習・英作文の練習と並行して、週末には本番を意識した過去問演習を実施しました。
135分かけて読解・英作文・リスニングを通してこなすのはなかなかハードですが、本番で戦うための体力と集中力を養うためには不可欠なトレーニングです。
私の場合は、週末に過去問を解いて、平日に1週間かけて見直し・復習をするという流れで進めるようにしていました。
- 英作文は時間を測って実践的なトレーニングを(できれば毎日)
- 週末には過去問を通して解いて本番で戦える体力と集中力を鍛える
- 英単語は最後まで諦めずに詰め込む
一次試験当日
さあ、いよいよ一次試験当日。皆様が持てる力を発揮できますように。
2時間以上フルの集中力を保つ必要があるタフな試験なので、体調管理は万全にして望みましょう。
試験当日のアドバイスについては、当日作戦編としてまた別記事でまとめたいと思います。



私は近くの高校で受験したのですが、高校の教室の小さな机と椅子で受験後は全身が痛かったです。
二次試験3週間前:ショートスピーチ対策スタート
スピーチ原稿の暗唱よりも自分の言葉で話す練習をしよう
二次試験のスピーチ対策を始めたのは二次試験の約3週間前でした。
もちろん、一次試験終了直後から面接対策を開始できれば理想なのでしょうが、二次試験までは1ヶ月~1ヶ月半のインターバルがあるので、ガス欠になることを考えて一次終了後は2週間ほど休養に当てました。
この二次試験対策が独学では最も難しかったところで、かつ、最も試行錯誤を繰り返した部分なので、別記事にて詳しくシェアしたいと思います。
一応、上記の二次試験用の参考書を購入しましたが、正直これは必要なかったかなと思います。(ほとんど使いませんでした)
スピーキングはライティング以上に即興性が求められるので、他人の書いた参考書のモデルスピーチの意見を丸暗記するだけでは結局本番で苦労することになります。
自分の経験に基づいた意見を出す力と、それを自分自身の言葉で伝える練習をすることが合格への鍵だと思います。
- 自分で考えて自分の言葉で話す練習あるのみ



個人的にはこの二次試験対策がメンタル的に一番辛かったです。過去問演習と違って明確な点数が出ないので、練習すればするほど不安になる感覚でした。
二次試験当日
長かった英検対策のクライマックスとなる二次試験。
試験自体は始まってしまえば約10分間であっという間に終わりますが、控室で30分から1時間ほど待つことになります。
スピーキングの試験は筆記と違って一発勝負ということで、一次試験とはまた違った緊張感がありますね。
こちらについても詳細は別記事でまとめたいと思います。



二次試験後に会場を出たときの解放感は忘れらません!
まとめ
英検1級は4技能のバランスの良い能力が求められるとても良い試験です。
試験対策を通じて、高度な英文を読みこなすためのベースとなる語彙力、社会的に賛否のあるテーマについて自分の意見を発信するアウトプット能力の基礎を養うことができます。
真のネイティブレベルに近づくためには、英検1級合格後も弛まぬ努力が必要ですが、確実にその第一歩となる試験だと思います。
この記事が少しでもその一歩を手助けするものになれば嬉しいです。
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