洋書多読で英語を学ぶ『2030年 全てが「加速」する世界に備えよ/ The future is faster than you think』

こんな方におすすめ!
  • 洋書を使って英語を学びたい
  • 未来の世界を一変させる最新のテクノロジーに興味がある
  • 前例のないスピードで変化する世界において、正しい選択をするためのヒントがほしい
2030年 全てが「加速」する世界に備えよ/ The future is faster than you think
史実/伝記
創作/文学
短編
長編
初級
TOEIC500
600
700
800
900
上級

今回紹介する本は、ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラーの共著『2030年 全てが「加速」する世界に備えよ/ The future is faster than you think』です。

日本語版は黒背景に明るいグリーンの表紙が印象的で、書店で目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

未来を生きるためのヒントをくれる本書は、描かれる未来像が刺激的なのはもちろん、英文自体が非常に流麗でドラマチックな英語表現に溢れた一冊です!

かなりボリュームがあって難しい表現も多い本ですが、みなさんが本書を英語で読む際の参考になれば嬉しいです!

KEI

読んでいて「はぇ〜。やっぱ頭の良い人の考えることは違うな〜」と何度も声が出る本でした!

目次

タイトル・表紙デザイン比較

まずは原書と日本語訳版のタイトル・表紙デザインを比較してみたいと思います。

これは僕が海外のビジネス書を読むときに楽しみにしていることでして、タイトルの訳し方や表紙デザインの違いによって、日本の出版社の思惑やマーケティング手法が見えてくるので面白いです。

原書『The future is faster than you think』

まず、原書のタイトルは『The future is faster than you think』といいます。

非常にシンプルなタイトルですが、比較級表現を用いることで読者に想像を促すというアイデアが面白いですね。

表紙は黒背景に白抜き文字でインパクトがあります。
文字に一部カラフルな装飾を入れることで、本書ならではの楽天主義的な視点での未来観が表現されています。

日本語訳『2030年 全てが加速する世界に備えよ』

一方で、日本語訳版のタイトルは『2030年 全てが「加速」する世界に備えよ』となります。

タイトルについて原書との大きな違いは2つ。
1つ目は「2030年」という具体的な数字が提示されていること、2つ目は読者に対して「備えよ」と命令文になっていることです。

本書で示されるのは基本的に楽観的な未来予想なのですが、読者を煽るようなタイトルにした方が日本ではよく売れるのだろうと思います。

「明確な数字を出しつつ具体的なアクションを読者に提示する」というのは日本のビジネス書タイトルの定番ですね。

表紙のデザインについても、黒背景という点では同じですが、文字色をビビッドなグリーンになっていて、よりインパクト重視に変更されています。(実際に書店の本棚でもかなり目立ちます!)

英語ペンギン

書店で日本語訳版を手に取ると、表紙がラバーみたいな加工がされていてびっくりしたよ!

KEI

そうそう!日本のビジネス書の装丁のこだわりはすごいよね。
僕は電子書籍でしか買わないけど、紙の本としての所有欲をくすぐるデザインになってると思う。

読む前に押さえておきたい英単語5選

本書を少しでもスムーズに読むために、あらかじめ押さえておきたい英単語を5つピックアップしました。
この本を読んでいると毎ページのように登場する単語たちです。

いずれも英検準1~1級レベルの単語ですが、本書で何度も出てくるキーワードなのでこれを機にインプットしましょう!

exponential:指数関数的な、急激な

convergence:ある一点に収束すること、集中性

disruptive:破壊的な、崩壊的な、混乱を起こさせる

accelerate:加速する

autonomous:自律的な、自主的な、自治権のある

KEI

本書はとにかくワードセンスが知的で、文章にリズムがあるんだよね。僕もいつか会話で「exponential」とかさらっと使ってみたい。笑

英語ペンギン

無理に使うとたぶん嫌われるから気をつけて。笑

本書を英語で読むために

本書を英語で読むための僕なりのコツをご紹介します。

我々日本人が英語でビジネス書を読もうとすると、どうしても日本語で読むよりも時間がかかりますよね。

そこで注意すべきは、「本の全体像が掴めないままになんとなく読み進めてしまうこと」と「途中で飽きてしまうこと」です。

それを防ぐためには以下の3つの対策がおすすめです!

対策

対策1:目次を活用して本の全体像を掴む
対策2:自分の興味のある章から読む
対策3:固有名詞はGoogleで検索する

対策1:目次を活用して本の全体像を掴む

本文を読み始める前に目次は熟読しましょう。

目次をしっかり読むことで、著者がどのようなストーリーで1冊の本を展開したいのかが見えてきます。

本の全体像を掴めているかいないかで、英語で読み始めたときの理解スピードも大きく変わってきます。

KEI

ちなみに、日本語版の目次の方がより詳細に書かれているのでストーリーを掴みやすいです。英語で読む方でも、日本語版の目次に目を通すと読みやすくなるかもしれません!(目次部分はAmazonで試し読みできます)

英語ペンギン

日本のビジネス書は読みやすくするための工夫が散りばめられているからね!

対策2:自分の興味のある章から読む

ビジネス書は必ずしも最初のページから順番に読んでいく必要はありません。

読書において大切なことはただ全ページを読破することではなく、著者の主張から今の自分にダイレクトに刺さる文章を見つけ出すことです。

気になる章に辿り着くまでに挫折してしまうともったいないです。(英語で読む場合はなおさら挫折しやすいので、、笑)

特に本書はカバーする分野が広く、興味がある分野は人それぞれ違うので、気になるテクノロジーの章からどんどん読んでいくようにしましょう。

KEI

僕も洋書初心者のころは「まえがき」で心が折れそうになっていました。笑

対策3:固有名詞はGoogleで検索する

本書では聞いたことがないテクノロジーや、それを扱うスタートアップの経営者の名前などがどんどん出てきます。

残念ながら本書にはビジュアルイメージは掲載されていないので、固有名詞がでてきたら積極的にGoogleで画像検索をしてみましょう。

初見のテクノロジーを文字情報だけで理解するのは無理があるので、そこは素直にGoogleに頼ることをおすすめします。

例えば、本書で登場するハイパーループ(Hyperloop)という超高速の移動装置。

文章だけではさっぱりイメージが湧きませんが、一目画像を見ればすぐに理解することができます。

ハイパーループのイメージ(Virgin hyperloop公式HPよりhttps://virginhyperloop.com/

テクノロジーの融合/ The Power of Convergence

ここからは本書の大まかな流れを紹介していきます。
この記事ではほんの一部しか書くことができないので、興味を持った方はぜひ本書を手に取ってみてください。

本書の全体像

第一部:現在の状況の説明(各分野の最新テクノロジーの融合、進化のスピードが加速)
第二部:近い将来の各分野の紹介(買い物、広告、エンターテイメント、教育、医療、金融、食料など)
第三部:さらに先の未来について(移民、気候変動、宇宙、脳、クラウド)

まず第一部において、本書における未来予測のベースとなる考え方が示されます。

各分野の最新テクノロジーが互いに融合し始めている。

これが著者の主張の大前提であり、最も重要なポイントです。

各分野の技術(AI, 量子コンピュータ, ロボット工学, ナノテクノロジー, バイオテクノロジー, 3Dプリンティング, ブロックチェーンなど)が急速に進化していることはもはや当たり前で、それはあくまでも「old news」、つまり古いニュースにすぎないと著者は指摘します。

「new news」つまり真のニュースとは、それらの最新テクノロジーが融合(converge)し始めていることであり、本書では以下のように表現されています。

The new news is that formerly independent waves of exponentially accelerating technology are beginning to converge with other independent waves of exponentially accelerating technology.

真のニュースとは 、以前はそれぞれが独立していたテクノロジーの波が、他のテクノロジーの波と融合し一つになりつつあるということである。

Diamandis, P. and Kotler, S.,The future is faster than you think (Simon & Schuster, 2020) p.8

formerly:以前は、昔は

しかも、融合したテクノロジーの進化は今後さらに加速するとされていて、次の章では「加速を加速させる」ファクターが紹介されます。

英語ペンギン

それぞれの先端技術の発達がすでに「古いニュース」という表現が面白いね。

KEI

ひとつひとつのテクノロジーが重なり合ってさらに大きなイノベーションのうねりを生む、というマクロな想像力がすごい。

加速が加速する/ The Acceleration of Acceleration

次に、加速を加速させるファクター(本書では「driver」と表現されます)として、著者は時間・金・ヒトの観点から以下の7つをあげています。

加速を加速させる要素
  1. 時間の節約/ Saved Time
  2. 潤沢な資金/ Availability of Capital
  3. 非収益化/ Demonetization
  4. 天才の発掘しやすさ/ More Genius
  5. 潤沢なコミュニケーション/ Communications Abundance
  6. 新たなビジネスモデル/ New Business Models
  7. 寿命を延ばす/ Longer Lives

すべての紹介はできませんが、僕が読んでいて「なるほどな〜」と思ったのは①の「時間の節約/ Saved Time」です。

時間の節約というと、掃除ロボットやドラム式洗濯機などの時短家電がイメージしやすいかもしれません。
「時短家電は時間への投資だから高くても買う価値がある」って言われたりしますよね。(僕もドラム式洗濯機欲しいです!)

ですが、著者の視点はもっと壮大です。

著者は、テクノロジーの進歩によって多くの時間を手にした人類は、より早いペースで変革を生み出すことができる、と指摘します。
新たなイノベーションを生むためにはそのための十分な時間が不可欠、ということですね。

個人がテクノロジーから受ける恩恵を地球規模の現象として捉え直すことのできる著者のビジョンは卓越していますね。

What this actually means is that saved time isn’t just a benefit of technology, it’s also a driver of innovation – another force accelerating our acceleration.
時間の節約が実際に意味するところは、ただのテクノロジーの恩恵というだけではなく、それ自体がイノベーション自体を加速させる装置であるということである。

Diamandis, P. and Kotler, S.,The future is faster than you think (Simon & Schuster, 2020) p.71

benefit:利益、恩恵、手当

すべてが生まれ変わる/ The Rebirth of Everything

第二部では、加速を続けるテクノロジーの向かう先が具体的に紹介されます。

日本語タイトルにもあるように、2030年の未来はどうなるのか?という疑問に答えるのが第二部なのですが、各分野でかなりのボリュームがあるので読むのに結構体力を使います。笑

無理せずに興味のあるトピックから読んでいくようにしましょう。

本書で描かれる2030年の未来
  • 買い物 
  • 広告 
  • エンターテインメント 
  • 教育 
  • ヘルスケア 
  • 寿命延長 
  • 保険, 金融, 不動産 
  • 食料 

個人的に興味深いのは「教育の未来

VR・AR技術により学びの質自体が向上すること加え、僕は現在発展途上国とされる地域の子ども達への教育に着目したいです。

これまでは経済的理由により正規の教育にアクセスすることができなかった子ども達が、テクノロジーの発達により、インターネットに接続可能なデバイスさえあれば簡単に質の高い教育コンテンツにアクセスできるようになりつつあります。

これは間違いなく未来の世界にポジティブな変革をもたらすはずです。

近い将来、そうした地域の若者たちが新たなムーブメントを起こすようになると面白いですね。

5つの大移動/ The Five Great Migrations

第三部ではさらに視野を広げて2030年よりも先の未来を見通していきます。

さすがにSFの世界に近くなってきますが、世界の頭の良い人たちの世界の捉え方を知っておいて損はないはずです。

著者は「人の移動」という切り口から100年先までを考えます。

5つの大移動のキーワード
  1. 気候変動/ Climate Migrations
  2. 都市/ Urban Relocations
  3. バーチャル世界/ Virtual World
  4. 宇宙/ Space Migrations
  5. 脳/ Brain-Computer Interface

宇宙や脳までいくと僕の想像力ではついていけなくなるのでひとまず傍に置くとして、著者が世界史的な観点から人の移動に着目しているのは面白いです。

迫害から逃れるために世界に散らばったユダヤ人たちがイノベーションを促進したことように、新たな環境に適応しようとする人間のエネルギーは変革を生むためのエンジンになりうると述べています。

今後起こるとされる人類の移動が、「ゲルマン民族の大移動」のような歴史的なインパクトをもつ出来事になるとすると、世界史好きの僕からするとワクワクします。

A great many of our mass migrations began with people fleeing from danger, disaster, and all the unspeakable horrors we now know as “history.” Yet, despite originating in strife and tragedy, in the long run, migrations has a positive impact on culture.
ほとんどの民族大移動は、危険や災害、「人類の歴史」として扱われる恐怖から逃れることから始まっている。しかし、それが争いや悲劇に起因するものであったとしても、長い目で見ると民族移動とは文化的にポジティブな影響力を持つ。

Diamandis, P. and Kotler, S.,The future is faster than you think (Simon & Schuster, 2020) p.237

flee:逃れる、避難する

originate:起源する、始まる

strife:争い、闘争、紛争

まとめ

今回は『2030年 全てが加速する世界に備えよ/ The future is faster than you think』を紹介しました。
読み終わっての僕なりの学びポイントです。

学びポイント
  • この世界はとんでもないスピードで変化している
  • テクノロジーの進歩によりそのスピードはさらに加速し、2030年には世界の姿は大きく変わっている
  • 変化についていくためには、これまでの常識を根底から疑い、自らを変えていく必要がある
  • 人類史上前例のない急激な変化の中にいることを自覚し、それに遅れないように学び続けることが大切

The future is faster than you think」のタイトル通り未来の世界は僕の想像を大きく超えたエキサイティングな場所でした。

「加速が加速していること」は、ここ10年の身近な状況の変化を比べるだけでも実感できますが、その理由が体系的に論じられているので終始目から鱗でした。

一方、著者はあくまでもシリコンバレーの住人であり、その価値観において論じていることは留意しておく必要があると思います。

どうしても地域差がでることは間違いないので、ここ日本における2030年がどのような姿になっているかはまた別の問題として捉えるべきでしょう。

個人的には、もし2030年の時点で技術的に実用化できていたとしても、日本の法律や人々の心理がどこまでテクノロジーに追いついていないのでは、と感じます。

結局、誰ひとり2020年のパンデミックを予測できなかったように、どんな天才であっても10年先を正確に見通すことはできません。

本書から得られる最大の洞察は、2030年の最新テクノロジーを知ることではなく、現在我々が人類史上例のない変化のなかにいることを強烈に認識させてくれる点にあります。

華やかな未来像に目を奪われがちですが、真に目を向けるべきは今この瞬間にも世界で起きているイノベーションのダイナミズムです。

それさえ認識できていれば、今後世界がどのような方向に進むとしても、しっかりついていくことができるのではないでしょうか。

異次元のスピードで変化する世界において、正しい選択をするためのヒントが欲しい方におすすめの一冊です。

KEI

最後まで読んでいただきありがとうございました!
世界の変化についていけるように常に学び続けて自分をアップデートしていきましょう!

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KEI
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