- ノンフィクションの書籍を英語で読んでみたい
- どれぐらいの英語力があれば読めるのかを知りたい
- データや統計などの事実をもとに正しく世界の姿を捉えたい
今回紹介する本は、2019年出版のハンス・ロスリング氏の世界的ベストセラー『ファクトフルネス/ Factfulness』です。
医師として世界中を見てきたロスリング氏がデータに基づいた正しい世界の見方を解説する本書は、ビル・ゲイツ氏やバラク・オバマ元大統領にも絶賛される名作中の名作です。
データに基づいた世界の見方、というと難しく聞こえるかもしれませんが、非常に分かりやすくかつユーモアたっぷりに書かれているので、とても読みやすいです。中級者から十分に楽しめる英語多読教材になっています。
分かりやすい表現と単純明快な論理展開。こんな英文を書けるようになりたいです。
『ファクトフルネス』概要
多くの人が囚われる思い込みからの解放
本書は、誰もが無意識のうちに持ってしまう誤った思い込みを、分かりやすいデータやグラフを用いて、ひとつずつ正していくという構成になっています。
人はどうしても世界を実際よりもネガティブに捉えてしまう性質があるようです。本書で紹介されているものとして、、
- ネガティブ本能(The Negativity Instinct)…「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
- 恐怖本能(The Fear Instinct)…「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
- 焦り本能(The Urgency Instinct)…「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
Every group of people I ask thinks the world is more frightening, more violent, and more hopeless, in short, more dramatic than really it is.
私が質問する全ての人々のグループは、世界が実際よりも、恐ろしく、暴力的で、絶望的な、要するによりドラマチックであると考えている。
『ファクトフルネス/ Factfulness』Introductionより
ニュースで報じられるのは常に戦争や自然災害、疫病、航空機事故、サメの襲撃などのショッキングでドラマチックな出来事ばかりです。(世界の平均寿命やワクチン接種率が年々少しずつ向上しているという”小さな改善”はニュースにならない)
それらは本来普通ではないこと(unusual)なのですが、注意してニュースを見ないと我々はそれらを普通のこと(usual)として認識してしまいます。それが多くの人が歪んだ世界の見方をしている原因であると本書では説明されています。
本書では、ロスリング氏が明快な論理展開と美しいグラフを駆使して、読者の歪んだ世界観を鮮やかに修正していきます。
つい「なるほどな〜」と唸ってしまうような、新鮮な驚きと発見に満ちた本です。
主観的な思い込みから意識的に距離を置き、客観的なデータを活用するという姿勢はあらゆる物事において有効だと感じました!
筆者の情熱と優しさに満ちた一冊
「データや統計に基づいた世界の見方」と言うと、冷たく無機質なイメージを受けるかもしませんが、本書の文章が持つ雰囲気はそれとは真逆の温かい印象です。
一文一文から「1人でも多くの人に正しい世界の姿を伝え、思い込みからくる恐怖から解放したい」というロスリング氏の溢れんばかりの情熱と優しさを感じます。
また、作中で紹介される多くのエピソードからも、ロスリング氏が知的でありながらユーモアに満ちた人物であることがよく分かります。
ロスリング氏はこのファクトフルネスを書き上げた直後の2017年に癌により他界されています。人生最後の時間を捧げた本書にはそれに相応しい情熱がつまっています。
英語難易度はどれぐらい?
非常に分かりやすい表現と語彙レベル!TOEIC700点レベルから十分に挑戦可能
挑戦してみたいけどどれぐらいの英語レベルだと読めるかな?
多くの人に伝わるように分かりやすい表現で書かれているからTOEIC700点レベルからでも十分に楽しめると思う!
本書は複雑なデータや難解な表現・構文を弄して筆者の一方的な主張が綴られる、というタイプの書籍ではありません。むしろ、誰もが直感的・感覚的に理解できるように、あらゆる工夫が散りばめられています。
僕自身、読み始めてすぐに「これすごい!めっちゃ読みやすい!」と驚きました。本当に頭の良い人は「複雑で難しい事象を、シンプルな言葉で分かりやすく説明できる」ようです。
TOEIC700点レベルから十分に読むことができると思いますので、ぜひ怖がらずにチャレンジしてみてください!
聞き慣れない病名も登場するがそれはごく一部
語彙については、筆者自身が医師ということもあり聞き慣れない病名などの医学用語も多少は登場します。例えば、、
- turberculosis:結核、肺結核
- measles:はしか
- pneumonia:肺炎
- suffocation:窒息
ただそれもごく一部なので、本書の流れを理解するのには支障ありません。僕は簡単に辞書で調べて「ああ、病気の名前なんだな」と軽く流す程度にしていました。
むしろ、分かりやすい語彙・表現のみを使用して、本来は複雑な事象でも分かりやすく説明してしまうロスリング氏の文章力のほうが遥かに印象的です。
人々を不安から救うロスリング氏の言葉を英語で紹介
ここからは僕が読んでいて納得させられたロスリング氏の言葉を英語で紹介します。
本書はデータや統計を使って理路整然と説明しつつも、読者に「そんなに不安にならなくてもいいんだよ」と優しく語りかけるような文章が特徴です。
本書の主張としては主に、、
- 世界は少しずつであるが着実に進歩しており、より良い場所になっている
- しかし、ニュースではより悲劇的でドラマチックな出来事が報道されるため、我々はそうした世界の進歩に気付きにくい
- さらに、人間はネガティブな事象に過剰に反応してしまうという本能的な性質を持っている
- そうした悲観的な思い込みは、データや統計を用いたファクトベースの世界観を持つことで乗り越えることができる。本当の世界の姿は皆が思っているほど悪くない
読者に寄り添い勇気づけるようなロスリング氏の言葉が心地よいです。
世界は着実に進歩している
The world is in general getting better.
世界は概してより良い場所になっている。
『ファクトフルネス/ Factfulness』CHAPTER ONE: The Gap Instinctより
報道においては悲劇的な出来事のみが強調され、小さな改善については無視される
It is easy to be aware of all the bad things happening in the world. It’s harder to know about the good things: billions of improvements that are never reported.
世界で起こっている全ての悪い出来事を認識するのは容易いが、良い出来事、つまり決して報道されることのない無数の改善を知ることはより難しい。
『ファクトフルネス/ Factfulness』CHAPTER TWO: The Negative Instinctより
人間はネガティブなニュースに対してより敏感に反応してしまう
Remember that the media and activists rely on drama to grab your attention. Remember that negative stories are more dramatic than neutral and positive one.
メディアや活動家は人々の関心を引くためにドラマを用いており、ネガティブなストーリーは中立やポジティブなものよりもよりドラマチックであることを覚えておくべきだ。
『ファクトフルネス/ Factfulness』CHAPTER TWO: The Negative Instinctより
思い込みを自覚し、事実に基づいた世界の見方をすることが大切
As long as people have a worldview that is so much more negative than reality, pure statistics can make them feel more positive.
人々が実際よりもはるかにネガティブな世界観を持っている限り、純粋な統計を用いることは人々をよりポジティブな気持ちにするのに役立つ。
『ファクトフルネス/ Factfulness』CHAPTER TWO: The Negative Instinctより
ロスリング氏の文章は難しい語彙や構文を使わずに、シンプルで分かりやすい言葉で構成されていることが分かりますね!
まとめ
いかがでしたか?
洋書のノンフィクションというと身構えてしまうかもしれませんが、英文そのものが明快で非常に読みやすく幅広いレベルの方におすすめできる本です。
もちろん、データや統計は時の流れとともに古くなってしまいますが、本書で語られる”ファクトフルネス”は決して陳腐化することのいない普遍的な世界の捉え方だと感じました。
心から読んでよかったと思える本に出会えたことに感謝。本当におすすめです!
コメント
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