- 名作『星の王子さま』を英語で読んでみたい
- どれぐらいの英語力があれば読めるのかを知りたい
- 肩の力を抜いてほっと一息つけるような作品を読みたい。英語学習にちょっと疲れているあなたに
今回紹介する本は、フランス文学史に残る名作、サン=テグジュペリの『星の王子さま/ The Little Prince』です。
「原文はフランス語やん」というつっこみは置いといて、今回は今なお世界中で愛される本作の魅力を探っていきます!
生きるうえで大切なことを見つめ直すきっかけをくれる素敵な作品。僕はサン=テグジュペリの素朴でシンプルな文章を読んでいると、一文一文がじんわりと温かく心に染み入ってくるような不思議な感覚を覚えます。
英語の勉強ということは一旦忘れて、ぜひリラックスした気持ちで小さな王子さまのお話に耳を傾けてみましょう。
僕はこの先も何度も『星の王子さま』を読み返すと思います。僕にとって大切な道しるべのような作品です。
ラダーシリーズとは?
ラダーシリーズ公式HPより(https://ibcpub.co.jp/ladder/ladder_about)
ラダーシリーズは、使用する単語を限定して、やさしい英語で書き改められた、多読・速読に最適な英文リーダーです。巻末にワードリストが付属しているため、辞書なしでどこでも読書が楽しめます。
『星の王子さま』の英語難易度はどれぐらい?
挑戦してみたいけどどれぐらいの英語レベルだと読めるかな?
中学レベルの文法とTOEIC500点ぐらいの読解力があれば大丈夫だよ。
位置付けとしてはあくまで児童文学になるので、文章やストーリーは決して難しくはありません。TOEICでいうと500点ぐらいあれば十分に物語を楽しめるはずです。
- 文章:中学レベルの文法知識があれば十分に理解可能
- 単語:基本的に平易だが、ファンタジー特有の聞きなれない語彙もあり
- 物語構成:シンプルなストーリーで分かりやすい。挿絵もあるので場面をイメージしやすい
- 長さ:洋書デビューにちょうど良い長さ。短編よりは長いので読み終わったときの達成感がある
単語については読む前に押さえておきたいものをまとめたので参考にしてみてください!
weathervane:風向計
asteroid:小惑星
ephemeral:はかない、一日限りの、短命な
throne:王座、王位
thorn:植物のとげ、いばら
volcano:火山
wheat:小麦
「asteroid:小惑星」という単語はいかにもファンタジーらしいですね。英検1級レベル以上の語彙なので知らなくても全く問題ないです!
児童文学とはいっても大人も子どもも楽しめる作品なので、親子で一緒にチャレンジしてみるのも面白いかも!
著者サン=テグジュペリについて
洋書初心者でも読めそうな感じなんだね!挑戦してみようかな!
頑張って!
ここからは簡単に作品の紹介をするけど、その前に著者サン=テグジュペリの経歴が面白いから少し触れておくね。
誕生:1900年 フランス・リヨン
死没:1944年 フランス・マルセイユ沖(44歳没)
職業:作家、パイロット
代表作:『夜間飛行』『人間の土地』『星の王子様』
航空黎明期のパイロットとして
『星の王子様』の著者は、作家でありながら航空機のパイロットでもあったということをご存知でしょうか?
パイロットをしながら作家としても歴史に名を残すって、とんでもない才能ですよね。
しかも、生まれは1900年。ライト兄弟の人類初飛行の3年前です。
航空黎明期の飛行は、技術が発達した現代とは比べ物にならないほど危険なものでした。
そうした死と隣り合わせの孤独なフライトの積み重ねがサン=テグジュペリの感性を磨いていったのだと思います。
サン=テグジュペリの作品が、人間本来の強さや美しさにフォーカスされているのは、彼の空での経験によるところが大きいのでしょう。
ちなみに、『夜間飛行』は『星の王子さま』とは全くテイストが違う硬質な文章ですが、非常に美しい作品なので興味のある方は是非!(日本語で読んでも結構難しいですが!)
絵の才能
続いて、『星の王子様』の魅力を語るうえでは欠かせないのが、あのチャーミングな王子さまの挿絵。
なんと、これもサン=テグジュペリ本人が描いたものなんですよ。本を書けて、空も飛べて、さらに魅力的な絵まで描けるなんて、もう天才すぎて嫌になりますね。笑
他の人には真似できない色彩センスと、ちょっと滑稽でありながらも愛おしさを感じるキャラクター造形は神がかっていると思います。(個人的には「大物気どりの男」のほんわかしたキャラデザが好きです)
絵と色のセンスには嫉妬しちゃいます、、!
世界的な偉人に嫉妬してどうするんよ笑
空に散った天才
世界中の空を自由に飛んだサン=テグジュペリですが、44歳の若さでこの世を去ることになります。
第二次世界大戦中の1944年、偵察のために出撃したマルセイユ沖でドイツ軍と交戦し命を落としました。
彼の乗った偵察機を撃墜したドイツ軍パイロットは、サン=テグジュペリのファンであり、後に「彼だと知っていたら撃たなかった」と語ったようです。
本当なら友人になれたはずのふたりが、戦争という巨大な暴力のシステムのなかでは敵同士だったわけです。人間としての尊い想いが、戦争によって簡単に踏みにじられてしまうことに、どうしようもないやるせなさを感じます。
でも、サン=テグジュペリは作品にはそれさえも優しく癒やしてくれるような魅力があるので、読んでいて救われる気持ちになります。
あらすじ & 名言
サン=テグジュペリが今も世界中の人から愛されている理由が分かるね!
早く読みたくなってきたよ。
大好きな作品だから前置きが長くなったけど、ここからはあらすじと名言を紹介するね!ネタバレになるから今から読む人はスキップしてね。
出会い
サハラ砂漠に不時着したパイロットである「僕」は、そこで小さな王子さまに出会います。砂漠の真ん中に子どもが1人でいるというあり得ない状況ですが、王子さまはそんなことはちっとも気にしていない様子。
不思議な王子さまに興味を持った「僕」は、日に日に王子さまと仲良くなっていきます。(砂漠で遭難という命に関わる状況ですが、そういった緊張感はほとんど描かれません笑)
「僕」と王子さまの会話により、少しづつ王子さまの価値観が明かされるのですが、そのなかでも特に印象的なのが次のセリフです。
If a person loves a single flowers that lives on just one star among millions and millions of other stars, that is enough to make him happy when he looks up at the stars.
もしもある人が、何百万も何百万もある星のひとつに咲いているたった一輪の花を愛しているなら、その人は星空を見上げるだけで幸せになれるんだ。(enough to~:〜するのに十分、make ~ happy:〜を幸せにする)
サン=テグジュペリ『星の王子様』第7章より
とても素敵な考え方!愛する誰かを星空の中の花に喩えるサン=テグジュペリの想像力はどこから来るのかな?
サン=テグジュペリは実際にサハラ砂漠に不時着したことがあるらしいよ!そのときの経験がもとになっているのかも。
故郷
やがて、王子さまは自分の故郷の星と、そこに残してきた花の話を始めます。
王子さまと花はお互いを大切に思っていたはずなのに、うまく心を通わせることができませんでした。それを王子さまは悔やむのですが、誰しもが一度はそうした経験ってあるのではないでしょうか。
I should have seen the sweetness beneath her foolish game. Flowers are so difficult! But I was too young to know how to love her.
僕は彼女のつれない態度の裏にある優しさを見てあげるべきだった。花って難しいんだ!僕があまりに子どもだったから彼女を愛する方法が分からなかった。(should have 過去分詞:〜するべきだった、beneath:〜の下に、too young to~:〜するには若すぎる、how to~:〜する方法)
サン=テグジュペリ『星の王子様』第8章より
幼いのか達観しているのかよく分からない王子様だね笑
「大人と子ども」というのもこの作品のテーマの一つになっているよ。
あと、このシーンで面白いのが王子様の星の描写!すべてがスモールサイズで、朝食を温めるために火山を使うよ。
惑星
王子さまは見聞を広めるために故郷を離れることになります。花とはなかば喧嘩別れのような形で。
自分の星を出た王子さまは6つの星を巡ることになります。6つの星の住人たちは愛嬌たっぷりに描かれますが、それは人が人生で溺れがちなものを象徴しているんですね。
- 王様/ King → 権力、地位
- 大物気取り/ Vain man → 名声、賞賛
- 酒びたり/ Drunkard → 目先の快楽
- 実業家/ Businessman → お金
- 点灯人/ Lamplighter → 仕事
- 地理学者/ Geographer → 知識
王子さまは「大人っていうのはまったくどうかしてるな」と呆れながらも、テンポよく宇宙の度を続けます。
ここは「変な人たちのネタ大会」って感じだね笑
そうそう!でもそれがこの後効いてくることに、、。
地球
王子さまは6つの星を巡った末に7つ目の星にたどり着きます。その星を表現した言葉がこちら。
「111人の王様、7000人の地理学者、90万人の実業家、750万人の酒びたり、3億1100万人の大物気取り、46万2511人の点灯人」がいる惑星
その7つ目の惑星こそがまさに地球でした。ここまで変な人シリーズを笑ってきた人はドキッとさせられますね。
王子様の目からみると地球の大人たちも「みんなどうかしてるよ」ってことです。
ここでハッとさせられるんだね!
自分だったら王子さまに何て言われるんだろう?って考えさせられるよね。
キツネ
地球の大人たちに呆れつつも、王子さまは自分の星に残してきた一輪の花のことが忘れられません。
1人で思い悩む王子様の前に一匹のキツネが現れたのはそんなときでした。このキツネがすごくクールな考え方の持ち主で、とてもいい奴なんですね。
人と人とが絆を結ぶということ、つまり互いが互いにとってかけがえのない存在になることの意味を王子様に教えてくれます。
If you always come at four o’clock in the afternoon, then I will start to feel happy around three. The nearer it gets to four o’clock, the happier I will feel.
サン=テグジュペリ『星の王子様』第21章より
もしも君がいつも4時に来てくれるなら、僕は3時ごろから嬉しくなってくる。4時に近づくほど、僕はどんどん幸せな気持ちになる。(start to~:〜し始める、the + 比較級~, the + 比較級~:〜すればするほど、〜になる)
そして、キツネは「絆」の意味を理解した王子様に対して、有名なこの言葉を送ります。
The things that are most important cannnot be seen with our eyes.
サン=テグジュペリ『星の王子様』第21章より
本当に大切なことは目には見えないんだ。
この言葉は有名だよね!
結局、この言葉の本当の意味を考え続けることが大事なんだと思う!
別れ
地球に来てキツネから大切なことを学んだ王子さまと「僕」の別れのシーン。
すごく繊細で感傷的な場面なので、是非英語でも日本語でも読んでいただきたいです。見ているこっちまで泣きそうになってしまいますが、別れを悲しむ「僕」を慰めるための王子さまの言葉が温かいです。
You will look at the stars at night. My star, my home, is too small for me to show you. That will be better. My little star will simply be one of the stars for you. And so, you will love to look at all the stars.
サン=テグジュペリ『星の王子様』第26章より
夜になったら星を見てね。僕の星は小さすぎて、どこにあるか教えてあげられないけど、でもそのほうがいいんだ。僕の星は君にとっては夜空いっぱいの星のひとつになるよね。そしたら君は夜空全部の星を眺めるのが大好きになるんだ。(love to~:〜することが大好き)
ラストシーンは是非読んでみてね!
悲しみを乗り越えた「僕」がユーモアたっぷりに物語を締めくくります。
出会いのシーンで王子さま自身の言っていた「星空を見上げるだけで幸せになれる」という言葉につながるんだね。
まとめ
いかがでしたか?
子ども向けのシンプルなストーリーでありながら、非常に抽象的かつ哲学的、多くのメタファーが散りばめられたある意味難解な作品ともいえます。
僕に難しい考察はできませんが、20代後半の今の僕にとってのこの作品の感想を書いておきます。
本当に大切なものは目には見えない
このキツネの印象的なセリフは、時間をかけて考える価値がある言葉だと改めて感じました。
目には見えないものの大切さを認識し、それを手にするための正しい努力ができるかどうか。それによって人生の豊かさは決まるのだと思います。
私たちはついつい「目に見えるモノ」ー ブランド物、高級車、高層マンションなど に目を奪われ、本当に大切なもの価値を見誤りがちです。
僕自身もそうでした。モノはあくまでもモノとしての価値しか持たないのに、それを所有することで、モノの価値=自分自身の価値だと勘違いしてしまうんですね。
人生において本当に大切なものってなんだろう?って改めて考えてみると、それはやっぱり目で見えない形のないものでした。
人との出会い、健康、思い出、教養、自由な時間。
それらを手にするための努力を続けることで、少しずつ幸せな人生に近づけるんじゃないかなと思っています。
感じ方は人それぞれ。
この作品がみなさんにとっての「本当に大切なもの」を見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
僕自身、この記事を書くことで今の自分の価値観を改めて整理することができました!
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